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【感想】映画「プロメア」ネタバレ感想と、シナリオ構成の分析らしきもの

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「プロメア」を見てきました。想像よりも遥かに熱くて、想像よりも遥かに想像通りな作品だったので最高でした。以下、ネタバレに沿って記述するので、見てない人は劇場に行ってください。お願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始めに前提条件なんですけど、ぼくはこれ前知識ゼロで見に行きました。PVもポスターも一切見てないし、キャストの情報も松山ケンイチ堺雅人しか知らない(そもそも声優疎い)し、どういうお話なのか(そもそもロボットものなのか)も全く仕入れずに行きました。ただ「トリガー作である」ということだけ。グレンラガングリッドマンは共に完走したけど、キルラキルは見てない。そういう人間が見に行ったという前提で読んでください。

あと、ちょっとグレンラガン仮面ライダービルドのネタバレが入るかも…ごめん。

◇減点部分

どうしても加点式のオタクになってしまうので、ちょっと描写不足だなーという減点式なところからあげていきます。

・バーニッシュ同士の絆と、自分の種族に誇りを持っている描写

・マッドバーニッシュが何をしてきたのか

・バーニッシュは具体的にどう迫害されてきたのか

バーニッシュ周りの描写はもう少しあったほうが、全体に感情移入できるかなと思いました。フリーズフォースの残酷さと蛮行を表現するには劇中ので十分すぎるのですが、「バーニッシュは本当にひどいやつだ」みたいな世間の風潮みたいなのをもっと描いてれば、バーニッシュに対する感情も二転三転して面白かったかなと思います。それを苦心したのが冒頭のサイレント回想だったのかな……

・バーニングレスキューの描写(キャラ同士の会話とか戦う理由とか過去とか)

これはどうしても「SSSS.GRIDMAN」と比較してしまうところですね。1クールまるまる使ったアニメと比較するのも酷なのですが、もうちょっと一人一人に出番があってほしかったです。レミーくんとか空気なので。あとロボ戦。

・クレイの全体的な描写

これは本当に顕著で、「船飛ばしたらワープすら危ういことを知っておきながらそこをどう解決するつもりだったのか」「いくらなんでも選民思想が高過ぎではないか(もっと掘り下げた過去が欲しかった)」「すべてが終わった後どうしたのか」とかその辺がやっぱり欲しかったな~という印象。堺雅人さんの怪演でキャラそのものにはなんの不満も無いのですが、やはりもう少し説明が欲しかったという心残りはあります。あと自分の過去(ガロを助けた事件の真相)を語るのがかなり唐突に思えたので、もうちょっと前のほうが良かった気もします。慢心しているという描写にも捉えられるので、一概には言えませんが。

 

まあ、全部総じて尺が足りないに尽きますね。名探偵ピカチュウでも同じことを言いましたが……

多分尺が足りないっていうのは正確ではなくて、正しくは尺の割にやらなきゃいけない/やりたいことが多いってことなんだと思います。逆に言うとその縛りの中で厳選して描写したかった要素しか入っていないということなので、無駄なシーンは本当に無いんですよね。尺が足りないなんてことはたぶん制作側はぼくたちの5000倍苦しんでると思うので。

 

◇加点部分

というわけで加点部分、すなわちベタ褒めフェイズに入ります。

 

『ガロとリオがベストマッチで最高!ロボット戦が最高!みんな熱い!堺雅人最高!うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

……ってなことはこれ読んでる人全員わかりきってるので、見ている最中に実際に思っていた「これシナリオの構成がほんとにうめえなあ~」という点をいくつか挙げていきたいと思います。あらかじめ言っておきますが素人です。ただのコンテンツ享受オタクです。

 

◇シナリオ構成

・怒涛の伏線シーンと、その迅速過ぎる回収

これはピザ食ってるシーンのことですね。このときに提示された情報ってめちゃめちゃ多いんですけど、逆に「今は情報提示フェイズだよ」ってのがすごいわかりやすいんですよ。このとき伏線として張られたのが、

・アイナの姉が研究者

・ガロはクレイが誇り

・そのクレイが財団で、耐火服とか作った

・アイナの姉ちゃんがワープ装置ってのが作ってるらしい

・ピザの兄ちゃんが凄い

多いですね(抜けがあったら教えてください)。でも目が肥えてしまったオタク視点だと、「これは全部回収されるな」っていうのは容易にわかるわけです。

・アイナの姉はスパイか人質かだし、

・クレイは死ぬほど怪しいし、

・「財団」っていうワードがもうすでに怪しすぎるし、

・ワープ装置が話の軸か最後の切り札になるのはわかるし、

・たぶんピザの兄ちゃんはバーニッシュで炎操れるからピザ焼きうまいんだろうし、それを逮捕しにフリーズフォースが来て、ピザ食ってた民衆は手のひら返しして、レスキュー隊(というかガロ)はそれに憤慨するんだろうな

……ということまで読めてしまいます(あんなに下種で野蛮だとは思いませんでしたが)。

が、製作者はそこまで読まれることなんて全部読んでます。すなわち、これらの回収が死ぬほど早い。早すぎる!

まさかあんなに早く捕まるとは思わないし、テンプレみたいに手のひら返すし、その直後にクレイがやべえヤツっていう描写あるし、ワープ装置の説明もすごい自然な流れだし……

何が言いたいかというと、この段階で最後のカタルシスへとつながる情報はひとつもばら撒いてないんです。これの真逆の例が「名探偵ピカチュウ」です。若干ネタバレになってしまいますが、あれはオチを「ピカチュウは結局何者だったのか」というところにもっていきます。しかし視聴者はそんなこととっくに勘づいているんですよね。だから「王道だな」という感想を持ちはすれど、カタルシスには昇華されない(この点は名ピカ感想記事でも言いました)。

ではプロメアのカタルシスフィニッシュ(造語)は何か?それは「プロメアは全部の星を燃やし尽くすレベルで不完全燃焼だった→じゃあ宇宙に行って全部燃やそうぜ」ということです。これに関する伏線、いやそれ以前の問題である前提条件は、前半部分では何も触れられていません。突拍子もなく死んだ人間が出て来て、あの炎は宇宙人だとか平行宇宙だとか言い出します。

つまり、前半部分で解決される謎はちゃんと最初のほうに置いて即回収する一方、後半部分の核はまだ一切説明しないことで、話にメリハリがついているんです。で、ちゃんと前半部分は前半部分で、リオの暴走→ガロが止めるというオチと、クレイが能力者であるというヒキできちんと締まっています。ここで出てくる氷の湖も含め、これまでに出てきた要素はきちんと全部回収されているんですね(「頭を冷やしなさ~い!」と落とすシーンは本当に鮮やかだと思います。そのセリフまで回収してくるとはちょっと予想できなかった、まだまだだなあ)。だからこそ、後半部分に集中できるのです。

 

・突拍子のないように思えて実はそうではない

ではその後半部分の話です。先ほど「前半部分の謎は全部解決された」と言いますが、ひとつだけ例外があります。洞窟でのリオのセリフ「我々には炎の声が聞こえる」という謎です(このセリフは本当に絶妙で、比喩表現なのか本当なのかわからない、どちらともとれるギリギリのラインを攻めているような気がします)。

脳内で消去法的にひとつずつ謎を潰しながら見ていると、最後にこれだけが残ります(クレイの最後のヒキはどう見てもヒキなので置いておきます)。で、その謎を一番最後にきちんと解決しつつ、次のまったく新しい展開へと結びつける。というのも、この謎がちゃんと残されていることで、「この炎は生命体である」という唐突トンデモ設定にも説得力が生まれるのです。鮮やかですね。

 

・「プロメア」という単語の扱い方

後半部分で出てくるもうひとつの重要な要素に、「プロメア」という単語があります。オタクが大好きなタイトル回収ですね。でも実はプロメアに似た単語はすでに出ているのです。冒頭の回想シーンにちらっと「プロメス博士」という人名は出て来てるんです。ぼくはオタクなので聞き逃さなかった。

しかしいざ見てみるとプロメス博士どころかプロメアという単語すら出てこない(プロメポリスとか似た名前は出てきますが)。なので常に頭のどこかでは引っかかっているわけです(引っかかってるレベルなので謎ですらない)。で、それが「実は死んだ博士の名前」だったことが判明する。そしてそれが全部を知っている、まさに「デウスエクスマキナ」。

プロメス博士の存在はなんの伏線もないんですが、その存在感と説得力は「タイトルを冠している」という部分だけで最初からあるわけです。これ既視感あるなーと思ったら、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」のフランキス博士と同じパターンですね(今気づいた)。

 

・何も考えなくていい後半部分

 前半部分とは違い、後半部分は本当に何も考えなくていい作りになっています。伏線というものがほとんど存在せず、その場でドン!ドン!と色々提示してくるからですね。

「何も考えなくていい」展開は楽しいのですが、ずっと続くととんでもなく疲れるんですよね。だから後半だけにそれを集中させている。

でも何も考えなくてよくするにはかなりのスケール感が必要で、さらに伏線も貼ってはいけないという縛りが発生します。そこでグレンラガンという自己オマージュ(後述)をなぞることで視聴者の入りを良くし(見てる人限定ですが)、突然宇宙に行ってもなんとなく納得してしまうわけです。そのためには、きちんとしたこれまでの描写の積み重ねが必要なのですが、そこを前半部分できちんと描いている、とも考えられます。対数関数のグラフを描くように、前半の緻密な描写からトンデモSFへの飛躍が目覚ましいので、ある程度飛躍してても、脳が慣れてしまっているんですよね。

また、後半部分は「ガロとリオ」「アイナとエリス」などのベストマッチバディもの要素に特化してるのも、メッセージ性が強くて良いです。後述の仮面ライダービルドもそうですが、それだけに特化すると潔いですね。

 

◇実質グレンラガン

・もう隠してないよね

ドリルとか宇宙とか。ああいう「こんなこともあろうかと」っていうセリフは、伏線貼らずに勢いでいっぱい要素詰め込んでくる展開と相性いいよね。

また前述したように、それが壮大なスケールを許容する土台にもなっている気がします。落としどころが人間賛歌なのもグレンラガンらしいですね。

・カミナ生存ルート

グレンラガンは「カミナという主人公がいなくなってしまった世界」だと勝手に思っている(もちろん実質的な主人公はシモンですが、そういうとらえ方もできる)のですが、プロメアは「もしカミナがその勢いのまま突っ走っていたら」みたいな作品にも見えてしまいました。言うまでもなく、グレンラガンはそのカミナを失ったうえでのメンバーの葛藤や、なお残る影響と呪いに立ち向かいながらも受け入れていく、その部分が面白く、話のエンジンなので、シナリオの根本的な部分はまったく違うのですが、だからこそそうも思えます。

 

◇その他

・実質仮面ライダービルド

バディものは全部ビルドって認識してしまうガバガバ刷り込み判定ですごめんなさい。「主人公と相棒が水と油だけど最高にベストマッチ」「突然出てくる平行世界」「最終的にめっちゃスケールでかくなって、絶対に不可能だと思われた全世界救済ルートを作り出す」あたりが主な要因です。まあビルドがビルドたる一番の要素は「新世界でふたりぼっち、けれども最強のベストマッチ」だと思うのですが長くなるのでやめます。

 

・開墾滅殺ビーム

最高。なんだその「強制帰宅ビーム」「無人在来線爆弾」みたいなネーミングは。

名前がいちいち背景に出るの、めちゃかっこいいですよね。ここは「血界戦線」にも通じるかっこよさがあると思います。

 

・自分の感想ツイート一覧

いいね/RTしてくれると通知が届くので喜びます。全部ネタバレに配慮してるつもりです。

 

 

 

 ・オタクはなんでも加点式にするので信頼してはいけない

 

 

 

以上です!思ったより長くなった。ありがとうございました。シェアしてくださると嬉しいです。

 

 

また記憶消して見てえなあ