鬼火電磁波痛み分け

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【毎週更新アニポケレポート】#3「フシギソウってフシギだね?」【12/1放送】

はじめに

前回の第二回感想、時間が無かったというのもあるがかなり薄くなってしまったことが結構反省で……それに、トピックに関する感想がほとんど一行で終わってしまい、見栄えもあまりよろしくないと思ったので、まだまだ書き方は試行錯誤の余地があると感じた。

それに、どうしても実際の番組を見ながらしか読めない形態になっているので、見逃し配信が終わったあとだとどうしても面白くない。そういうところも踏まえながら書きつつ、今回から全体のあらすじも書いていこうと思う。このあらすじを書くってのが一番キツイんだけど……

 

 

 

かんたんあらすじ

サトシとゴウ、リサーチフェロー最初の仕事は、フシギソウ大量発生の原因を突き止めること。お互いの考え方の違いで喧嘩をしながらもフシギソウを追っていくと、日当たりの良い場所で一斉に進化をすることが目的だったことが判明。進化をする直前にロケット団の横やりが入るも、サトシや助けられたフシギソウたちが撃退することで、無事に進化を終える。そんなサトシの姿を見て、ゴウは改めて友達宣言をするのだった。

 

OP前パート

◆家事をするバリヤードの描写

ここ最近でバリヤードというポケモンの株が上がっている。

やはり大きなきっかけは「名探偵ピカチュウ」でのバリヤードだろうと思う。どういうことかというと、ポケモンという未知の生物の、その生物ならではの生態というのが、非常にわかりやすいポケモンだと認識したからだ。

「名ピカ」ではその一見意味のわからないバリヤードの生態がその生物にとっては重要なコミュニケーションの手段足り得ることを示されたが、今回の冒頭シーンのような「(起こすだけならサイコパワーでふとんをどかせばいいだけなのに)わざわざ掃除機の真似をする」「わざわざみんなに合わせて食事をする真似をする」も、その文脈に含まれると感じた。人間からすると意味のない行為だが、あえてそれを描写し強調することで、そのポケモンごとの個性があることを示す良いシーンだと思う。

 

 

フシギソウというチョイス

「不思議草」っていう名前、今考えると「そりゃポケモンは全部不思議な生き物だろ……」みたいに思ってしまうが、ここで「まだ解明されていない部分が多いから不思議」と再定義を施し、「身近なポケモンの謎の部分を調査する仕事」という話の軸をわかりやすくしている。これは「フシギソウ」という名前だからこそできる話の組み立て方だろう。「図鑑ナンバーで最初だから」だけではない、明確なチョイス理由だと感じた。

 

◆その他雑多な感想

・サトシが過去のことをゴウに話すシーン、ピカチュウに確認とってるのがサトシらしい

・コハルのワンパチの扱い、完全に犬で笑う。ゲームのモブ家にいる一匹飼いのポケモンもこんな感じなのかなあ

スマホが赤いの、ロトムの家電は全部赤いという統一にも則ってて好き(これはSMのロトム図鑑にも言えるけど)。

・OPはもう結構ヘビーローテーションを繰り返すぐらいには好きなのだが、これも歌詞をかみ砕いていくとかなり良い歌詞なので、書いてみたいなあという気持ちはある……

Aパート

フシギソウを助けるか、助けないか

壁を越えられずに体当たりを繰り返すフシギソウを助けるか助けないかで揉めるシーン。詳しくは後に書くが、ゴウの「自分の力で困難を乗り越えられないポケモンはそこまでだろ」「助けちゃったら、生きる力が減っちゃうっしょ!」「その場の一時的な感情で助けるのは人間のエゴだっての」という考えは、ここでは論理的な物として扱われているのに対し、サトシの「助けたいと思ったら助けるんだ」「エゴでもなんでも、俺はこいつを助ける」という考えは、経験に即した本能的、直感的な物として扱われている。本来はどちらも別に貴賤があるわけではないのだが、今回は「ゴウがサトシの考えを認める」という構成のために、ゴウがわざと幼く見えるように描かれていると感じた(結局お前もそういうやつか……というセリフは、それでうまくいかないことが多かったんだろうなという推測にもなる)。

(難しい言葉を使うことで逆説的に幼さが強調されるという描き方は、1話の「ポケモン博士」の描写と同じ流れなのだが、それはそれとしてまあ自分と重ね合わせてしまう……)

また、リサーチフェローを「目的」と考えるゴウと、「(ポケモンと触れ合う)手段」と考えるサトシとしても対になっている。リサーチフェローという目的の達成は前回のルギアの描写がそれに値すると思うので、やはり2話と3話は前後編のような扱いが適している気がする。

しかし対比として描いていながらも、「結局やること(スマホを構える、壁に登る)は同じ」「サトシが何もしなくてもフシギソウは自分で解決する」「張り合う二人にピカチュウが呆れる」というオチは、一見考え方が違う二人でも根本は同じであるというダブル主人公故のメッセージ性であると同時に、考え方が違うからと言って袂を分かつ必要は無いというメッセージであるようにも思える。

 

◆その他雑多な感想

・ゴウのロトムの声、まだ慣れないなあ。まあロトム図鑑も最初はかなりびっくりしたのでそのうち慣れるとは思うけど。auのCMを意識してるんだろうか?そこまで考えてない気もする。

ロケット団について「ネットで見た」って言われんの面白すぎる。目撃情報とかツイッターに書かれんのかな……

・サカキ様、喋る度に小物感強くなってない?(まあ、これに関してはたぶんあんまり神格化されるほうが違うんだろうなという気もある)

 

Bパート

◆人工物の中でたくましく生きるポケモン

今回のもう一つのテーマ。動物番組とかでたまにテーマになってるやつ。

ワイルドエリアといい、発売前の「24時間定点カメラ」といい、そういう文脈にあると思う。

そのうえで、「フシギソウになってみればいいじゃん!」というのは、非常にサトシっぽいのと同時に、動物番組文脈で言うなら、いわゆるムツゴロウさん的な要素でもある。サトシという舞台装置に新たな一面が追加(強調)されたといえるだろう。

 

ロケット団のメタツッコミ的な役割

ついに登場ロケット団。口上後ニャースの「お初でニャース」「こういうタイプちょっと苦手だニャ」というちょっとメタっぽいセリフ、こういうのはサトシにはあんまりできない。

サトシはあくまで作中キャラというのを結構徹しているのに対し、ロケット団は「ロケット団ひみつ帝国」*1に代表されるように、かなり「こちら側」との接点が強いキャラクター達だ。

その最たる例が今回の「ペリッパーガチャ(仮称)」だろう。剣盾のレイドバトルに代表されるように、割と隠さずにソシャゲ要素を持ってきているというメタ的な流れにあるものだと思う。ロケット団からポケモンが支給される*2というのも過去に何度かやっており、不自然ではない。積み重ねがなせる設定だろう。

吹っ飛ばされるときも「初志貫徹ピカチュウを狙う」ということを言っており、これまでの時系列の流れにあることをわかりやすくしている(これはサトシにはあまりなかった要素だ)。

 

◆「導く者」としてのサトシ

フシギソウを身を挺して守るサトシに憧れを抱くゴウ。こういったサトシのキャラクター像はSMシリーズ、ひいては「みんなの物語」で強調及び確立された、舞台装置としてのサトシの役割、「導く者」だ。これを自分はメシア(救世主)サトシと呼んでいる(ちょっと大仰だが、サトシならではの美学や、「ポケモンパワー」で人々を動かす様はあながち間違っては無いと思う)。これはたぶんこの後の感想でも多く言っていくと思うので覚えておいてほしい。

この「サトシに導かれてポケモンのすばらしさに目覚める」というのは、そのまま昔からサトシを追い続けてきた視聴者にも繋がり、現に「みんなの物語」はそういったメッセージを込めた作品にもなっている。

今回はまさしくその「みんなの」像そのままである。どうしても理論やきれいごとで済ませてしまいがちな思考を、大きくデフォルメ化してゴウというキャラクターに落とし、それに対になる者としてサトシを配置する。一方で、ゴウのような理論的な視点も大切であるから、そのために、それを目的とするリサーチフェローという役割を置く。第2話はその役割を大きくフィーチャーしたものであることは前述したとおりだ。

サトシの行動力や考え方が大事としながらも、それ以外を否定しない書き方は「みんなの」にも見られたものと同じである。理論的、常識的な思考をしながら、潜在的にはサトシのような生き方に憧れてしまうのは、ポケモンを追い続けてきた視聴者にならどこか刺さる部分があるのではないだろうか。

 

◆コハル「花が一斉に咲いちゃってさあ、私係だからあれこれ大変で~」

一見フシギソウの大量進化は良いことだし、研究的にも意義のあるものだが、それはそてとして迷惑を被る人もいるというのは、物事を多角的に見る上では非常に大事な視点であるし、冒頭の交通渋滞の描写も含め、人間社会的には多分他の対策をしたほうが都合がよい。そういった面をきちんと描くことで、必ずしもサトシたちの行動が「善い」とは一概には言い切れないことを示しているといえるだろう。

また、これも前述の「みんなの」文脈に似ている。描写こそされないものの、コハルはコハルで主人公であり、描かれた物語の裏にも別の物語がきちんとあることを間接的に描写する。群像劇的な考え方であり、これは今回のシリーズでは猶更より強調されていくのではと予想されている。

 

◆その他雑多な感想

ワンリキーが地ならししてるの、原作ネタでいいよね。

・人工物を無理矢理登っていくフシギソウたちはともかく、人間用の建物なんだから怪談とかあるんじゃないのか?サトシたち……

・「これって進化!?」と驚くゴウと、何も言わず察するサトシ。こういうところでサトシの経験の差が出るのが好き。

ロケット団の口上が戻ってる!……とは言うものの、XYからそうだったので、あんまり原点回帰って感じはしないのが面白い。まあ、このシリーズから見始める人用のサービスなので、それはそれでいいんだけど。

 

 

◆総評

冒頭で言った通り第2話感想がかなり薄かったのでそれも補完しつつ書いた。2話と3話はサトシとゴウの対比という意味では同じ流れにあるものだと思う。

ロゴが「みんなの」と同じ時点でなんとなくわかっていたが、やはり今回は「メシアサトシ」の概念を強調していくことになりそうだ。サトシの固定なのか、次への継承(剣盾文脈)なのか、そういうところも注目してみていきたい。

 

【次回】

tenloooooooow.hatenablog.com

 

【前回】
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*1:2012年に放送されていたWEBラジオ。アニメの声優が多く登場し、インタビュー等も行っていた

*2:AG編第177話